Photo 特定非営利活動法人 国際教育推進プロジェクト BeCOM
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「それにね宮内さん、知ってます?」
と彼は続けた。

「渡辺って名字の人の七割は、ナベとかナベちゃんって呼ばれてるらしいんですよ」
「へぇそうなの」
私は伝票を整理しながら、顔も上げずに返事をした。

 彼は同僚のナベちゃん、29歳。
 けしてイケメンではないけれど、私のようなオバサンにも親切で仕事もそれなりに熱心。目下の悩みは彼女がいないことと、「ありふれた名字や呼び名のせいで、取引先に名前と顔を覚えてもらえない」ことらしい。
 取引先に顔を覚えてもらえないのは名字のせいじゃないと思うよ、そう言ってやろうかと思った時、入口のドアが開いて「こんにちは、回覧板、置いて行きますね」というやわらかい声が聞こえてきた。
私は思わず顔を上げて、帰ろうとした彼女を呼び止めた。瞬間的にオバサンの本能が働いたのだ。

 「あら、ユイちゃんご苦労様!ねぇちょっと待って」彼女はちょっと驚いた様子だったが、私はかまわずに話しかけた。

 「ユイちゃん、紹介するわ。この人、うちの会社のワタナベサトルくん。ナベちゃんって呼ばれてるの。ナベちゃん、こちらの彼女はワタナベユイさん。お隣の保険ショップにインターンシップで来てる大学院生さんなのよ」

 ナベちゃんは渡辺という名字に反応したのか彼女の素晴らしい笑顔に反応したのか知らないが、口を半分あけてぼーっとユイちゃんを見ている。わかったかナベちゃん、顔を覚えてもらうのに大切なのは名字じゃない、その人自身の魅力だよ・・ナベちゃんにそれを理解させたと確信したあと、もう一つおせっかいをするつもりで私は言った。

 「あのねナベちゃん、ユイちゃんは長野県出身なんだって。銚子のいい所、いろいろ案内してあげなさいよ」
 ユイちゃんは素直に「宜しくお願いします」と言いながら付け加えた。「でも私、今週いっぱいでインターンおしまいで・・週末に長野に帰るんです。」

 私は驚いた。何に驚いたかというと、私がユイちゃんに「えっそうなの?」と言うより早くナベちゃんが「そうなんですか、それじゃ次はインターンシップじゃなくて旅行で銚子に来て下さい。僕、案内しますから」と言ったことだ。今度は私が口を半分あけてナベちゃんを見る番だった。
 
 若い二人はひとしきり話をはずませたあと、それぞれの仕事に戻った。
 ユイちゃんは、お隣の保険ショップに帰り、ナベちゃんは取引先へと出かけていった。
 私も再び伝票の整理にとりかった。いつか渡辺ユイちゃんがナベちゃんの彼女のユイちゃんになることを想像しながら。

(作:いずみちえこ)

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BeCOMの2016年度の新規事業として「ちょうし恋旅」を企画しました!
この事業はBeCOMメンバー以外のさまざまな分野の皆さまともご一緒に取り組んでいきたい!と考え、実行委員会形式での開催とさせていただきます。
キャストも、参加者であるゲストも、それぞれに「旅する気持ち」「恋する気持ち」を楽しんでいこう? そんな想いで進めている実行委員会の雑談の中から生まれたこのプロジェクトPR企画の「ちょうし恋旅ものがたり」。月に1回更新の予定です。
ご覧いただきました皆さまからのご意見やご感想を大募集してまいります。
作品、つくっちゃった!もうれしいです。ぜひご連絡ください♪
メール:info@be-com.jp

「ちょうし恋旅」の詳細は、facebookページ「ちょうし恋旅」から配信中です!いいね!よろしくお願いします。
またinstagramで銚子のきれいな写真に#ちょうし恋旅をつけて更新しませんか?お待ちしています。



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